スティーブ・マックイーン:宮部昭夫 ポール・ニューマン:川合伸旺/井上孝雄 ウィリアム・ホールデン:近藤洋介 ロバート・ワグナー:城 達也 フレッド・アステア:中村 正 |
主要キャスト4人の声が同じという フジテレビ版と日本テレビ版の翻訳を比較してみる。 個人的には全体的に日テレ版の方が好きですな。 日テレ版はかっこいいセリフが多いがフジ版はダサい言い回しが多い。 惜しむらくはフジがほぼノーカットなのに日テレはカット版。 フジ セリフなし 日テレ「このマンションの住人として、ひとつ富豪の未亡人から巻き上げてやるかな」 詐欺師ハーリーがビルに入る時のセリフ。原語ではセリフなし。 ハーリーが詐欺師であるという説明が本編中の特に序盤にほとんどないので 初見だと詐欺師であることがわかりにくい。 日テレ版ではセリフを追加して詐欺師だとわかりやすくしている。 一方フジ版では偽物の株券を選ぶシーンで同様に ニセ株券で金を騙しとろうとしている旨のセリフが追加されている。 結局もとが説明不足なのよね。 フジ「オフィスが入ってるのは80階まででございます。つまり この81階から上、120階までは全て最高級のマンションでございまして」 日テレ「オフィスが入ってるのは80階まででございまして、 この81階から120階までは全て最高級のマンションでございまして」 81階のマンションの見学?に来た老夫婦を案内するスタッフのセリフ。 「ございましてございまして」と2回続ける言い方はあまり良くないな。 ちょっと気になる。 フジ「何だこのワイヤーは」「ひどい安物使ってる」 日テレ「何だこれは」「ひどい手抜きですね」 ショートした電気設備の中を調べるダグとウィルのセリフ。 火事の主な原因は「安物のワイヤーを使ったから」であって 「手抜き」という表現はちょっと違うと思う。 「ひどい安物だ」の方が適切でしょう。 フジ「どこにいたっていいでしょ。鎖つきの犬じゃあるまいし」 日テレ「僕は首に鎖のついた犬ですか?」 昼間連絡のとれなかったシモンズ工事部長にダンカン社長が行き先を問う。 これもフジ版に軍配をあげたい。 日テレ版は犬が出てくるのが唐突すぎる。 「どこだっていいでしょ」が先に来る方が日本語の会話のやりとりとして自然だ。 フジ「どうやって手に入れたか教えてくれないか」「国家秘密」 日テレ「1ケースもどうやって手に入れた」「拾ったんだ」 希少な29年物のワインを1ケースもどうやって手に入れたのかを聞かれて ジョークで返すダンカン社長。 どちらもジョークとして成立しているが、 「拾ったんだ」の方がジョークとして面白いと思う。 フジ「このワイヤーも違ってる」 日テレ「ここも手抜きだ」 電流のオーバーロードでワイヤーが過熱しているのを見つけたダグのセリフ。 さっきと同じで、指定と違う部品を使うことを 広い意味で"手抜き"と言えなくもないが、やや違和感がある。 フジ「可燃性の物は置いてないだろうな」「ああ、ないはずだ」 日テレ「可燃性の物は?」「置いてない」 火災現場の状況を聞かれて答えるダグのセリフ。 誰かが勝手に持ち込んでる可能性もあるわけだし この時点で「ない」と断言するのは無理があり 原語では断定口調なのかも知れないが、翻訳としてどうこうよりも この質問の答えとしては「ないはずだ」が適切だと思う。 フジ「ここでお約束します。ディナーの延期はありえません」 日テレ「なおディナーは、時間通りサービスいたします」 パーティー会場を1階へ移すことになり、客の移動を促す社長のセリフ。 「ディナーの延期はありえません」という言い方はなんかダサい。 社長のセリフとしては「時間通りサービスします」が適切かと。 しかしディナーの予定が何時間後か知らんけど 300人分ものディナーをどうやって運んでくるつもりなのかね。 フジ「冗談じゃないわー」 日テレ「もうちょい乗れるよ」 パーティー会場からエレベーターへ乗ろうとする群衆の一人のセリフ。 どちらも台本にないアドリブのいわゆる"ガヤ"だと思われるが アドリブのセリフが「もうちょい乗れるよ」てのがなんか面白い。 フジ「助けが来るなんて嘘だったのね」 日テレ「助けが来るなんて嘘ね」 ダン広報部長とローリーの密会。 この微妙な言い回しの違い。 フジはたった今嘘だと気づいたような言い方。 日テレは少し前から薄々気づいていたかのような言い方。 まあどっちもアリだけど、どちらかというと薄々感づいている方が お互い相手の考えてることがわかるほど深い関係だった ということでより感慨深くなるかも知れない。 ところでこの二人は不倫関係なのかな。 大抵こういうパターンでは不倫なのがありがちな設定だけど 少なくとも本編中にどちらか(あるいは両方)が 既婚者であるとわかる描写はないと思う。 フジ「どう思います」「蹴飛ばせば開くだろう」 日テレ「どうです」「足でぶち破れ」 扉の向こうが火の海で、開けてよいか聞くジャーニガンとダグの会話。 これも微妙な言い回しの違いだが これはつまりバックドラフト(爆発現象)のようなものを警戒して "開けていいかどうか"を聞いてるのに フジだと"どうやって開けるか"を聞いてるように聞こえる。 フジ「ああ、畜生め、なんだってこんなに重いのかな」 日テレ「畜生めー、まるで山を背負ってるみたいだな」 重いタンクを背負うオハラチーフのセリフ。 日テレ版はちょっと言うのが早すぎる。 背中にタンクの荷重がかかる前に文句を言い始めてる。 宮部昭夫も喋り始めてから早すぎると気づいたのか 「ちきしょぉぉめぇぇ」とやや間延びしたような言い方をしている ように聞こえるのは気のせいか。 まあチーフクラスなら何度も背負ってるだろうし 背負う前に重いことはわかってるからいいのかな。 フジ「フットボールのプロテクター並みに軽く作れないかってことさ」 日テレ「フットボールのプロテクター並みに軽く作れんのかな、怠慢だぞ」 重いタンクに文句を言うオハラチーフ。 物理的にそんなに軽くは作れないでしょう。 冗談にしても「怠慢」は言い過ぎじゃねーか。 みんな一生懸命やってるんだし。 フジ「よーしよし、助けてやるからな」 日テレ「一人で何をしてたんだ」 置き去りにされたネコを助けるジャーニガンのセリフ。 日テレ版の方が好きかな。 「助けてやるからな」で何も間違ってないけど こういう動物に対してあえて人間に接するようなセリフを使うと 使い方次第でいいセリフになる。 フジ「どうだ、訓練したことが生かせたろ」 日テレ「どうだ、訓練と変わりないだろ」 エレベーターシャフトをロープで降りる時、 新人隊員が怖気づいて「途中で落ちてしまう」と弱音を吐く。 そこでオハラチーフは 「落ちても仲間を巻き添えにせずに済む」と新人を先に行かせる。 その後無事に降りてきた新人隊員へのチーフのセリフ。 これも名セリフで、微妙だけどどちらかといえば 訓練が"生かせた"よりも、訓練も本番も変わらないだろ という言い方の方がいいかね。 ちなみにチーフも新人隊員のすぐ後を降りてきていて もしロープが絡んだりパニックになったりしても すぐ助けられるようにずっと近くにいるのよね。 厳しいことを言うだけでなくちゃんと部下思いのデキた上司だ。 フジ「一発で火を消す薬ができんもんですかね」「失業するぞ」 日テレ「簡単な消火方法はないもんですかね」「ないな」 とある消防隊員とオハラチーフの会話。 「失業するぞ」って言い方はひどいでしょ。 消防隊が活躍する機会がなくなればないに越したことはないわけで 消防隊長の発言とはとても思えん。 フジ「部下ですかチーフ」「ダン・ビグロー。いや、宣伝部の者だろう」 日テレ「部下ですか」「ダン・ビグロー。いや、隊員じゃない」 遺体がはめていた?ダン広報部長の腕時計を見てのセリフ。 フジ版、オハラチーフはダン広報部長のことを知ってるわけないはずだが さっき死んだダンの時計だと視聴者へわかりやすくするサービスかね。 初見では登場人物全員の名前を覚えきれないことがあるので。 実際自分は子供の頃は広報部長の名前を知らずにテレビで見ていた。 一緒に見てた親は広報部長の時計だと気づいて教えてくれた。 フジ「ロバートさん、どうやってここへ」「後で教えてやるよ」 日テレ「ロバートさん、どうやってここへ」「話は後だ」 降りる手立てがないはずの最上階パーティー会場に現れたダグへ どうやってここへ来たのか聞く。 「後で教える」といいつつ、実際は話す機会なんかない気がする。 なので「話は後だ」(話すという確約はしない)の方が適切かも。 フジ「親父の鼻息ばかりうかがってると死んじまうぜ」 日テレ「命守るにも親父の許可が必要なのか?」 降りられないと言われた南の階段を 一か八か降りてみようと妻を誘うも断られるシモンズのセリフ。 親の許可がないと自分の命も守れないのかと 親の言いなりになってる社長娘へ皮肉が込められていて 日テレ版の方がいい。 フジ「これじゃタワービルっていうより、人殺しビルだ」 日テレ「あんたらは人殺しと変わりないよ」 社長と工事部長を責めるダグのセリフ。 「人殺しビル」はちょっと、なんか、ダサい。 フジ「散々だったな。パイロットも助からなかったろう」 日テレ「見てたぞ。パイロットは助からなかった」 屋上のヘリが爆発してパイロットは死亡したとみられる。 チーフは下にいてあの短時間でなぜ死んだと断定できたのか。 確実に死んだであろう状況であったとしても 遺体を確認するまでは死んだと断定はできないかと。 なので「助からなかったろう」と推定口調の方が適切。 フジ「ヘリとウインチとケーブルをまわしてください」 日テレ「ヘリとウインチとケーブルを用意してくれ」 海軍航空救助隊長フレイカーに援助を頼むオハラチーフ。 まあいろいろ上下関係あるんだろうけど こういう緊迫した場面で敬語丁寧語では緊張感を削ぐ。 タメ口の方が緊張感がある。 チーフ⇒フレイカーはフジ版は終始丁寧語で、日テレ版は終始タメ口。 他にも例えばダンカン社長は最初の頃は客に対して 「一旦元の席までお戻りになって展望エレベーターで下へお降りになって」 とかクドいくらいの敬語だったのが 最後の方の生きるか死ぬかの場面になってくると 客に対しても構わずタメ口になっている。 フジ「何分後にセットした」「5分だ」「よし十分だろう」 日テレ「何分後にセットした」「5分だ」「なんとか逃げられる」 爆薬のタイマー、5分あれば余裕で戻れるのかそれともギリギリなのか。 まあギリギリにしといた方がより緊迫感が出るけどね。 翻訳としてはどっちが正しいのかな。 フジ「負けたよ。いつ行けばいい」「いつだって歓迎さ。じゃあまた会おうぜ」 日テレ「わかった。教えてくれ」「聞きに来いよ。建築屋さん」 最後のセリフ。 ビルの建て方を聞きに行けば解決なのかねえ。 なんか変な結末だ。と昔テレビで見た時思った。 宮部昭夫の「聞きに来いよ」ってセリフはよく覚えてる。 自分が昔見たのは日テレ版のようだ。 |